MedDRA®データ検索及び提示:
|
©本資料の著作権はICH事務局(IFPMA内)にある。
出典を明示することで、本資料の複写・引用は可能であるが、著作権者の事前の了解なしに、本資料の内容を営利目的で、電子媒体を含むいかなる文書に利用することは許されない。
IFPMA
Chemin Louis-Dunant, 15 P.O. Box 195 1211 Geneva 20 Switzerland Tel: +41 (22) 338 32 00 Fax: +41 (22) 338 32 99 http://www.ifpma.org/ 本資料の日本語版は、ICHのPTC-WGの国内メンバーの協力を得て、JMO事業部が翻訳したものである。 |
ICH国際医薬用語集(MedDRA)は、ヒトに用いられる医療用製品に関する規制情報を共有するという特定の用途を目的に作成されたものである。しかし、症状、徴候および疾患等の報告語に対して用語を選択する方法や、データ検索や評価の方法に一貫性がなければ、MedDRA用語集を使用しても、コーディングされたデータ交換に調和の効果は期待できない。
MedDRAは、報告者の用語(verbatim term)を正確に記録するための下層語(LLT)と呼ばれる特異的な(詳細な)用語を収載する大きな用語集である。LLTは、リンク先の基本語(PT)と呼ばれる上位語と概ね同義語である。PTもどちらかと言うと特異的で語数も多い。
MedDRAのような高度に詳細な用語集ではデータ入力において読み替える必要性は低いが、医薬品開発、ファーマコビジランスおよびリスクマネジメントを支援するために必要なデータ検索、分類および提示の処理過程に影響が生じる。MedDRAには、コーディングに使用する非常に特異的な用語をより広い医学的概念で集約する、高位語(HLT)および高位グループ語(HLGT)と呼ばれるグループ用語の階層構造が設けられており、データ検索を容易にしている。MedDRAの多軸性(PTを一つ以上の器官別大分類(SOC) に関連付けられること)は、プライマリーまたはセカンダリーの異なるルートから柔軟なデータ検索を可能としている。グループ用語および多軸性はデータ検索のための適切な最初の検討方法を可能とするものではあるが、MedDRAの複雑性故に検索結果を最適化するためにはガイダンスが必要である。
本文書 「MedDRAデータ検索及び提示:考慮事項(MedDRA Data Retrieval and Presentation: Points to Consider)」は、ICHがMedDRAユーザーに推奨するガイドである。本文書はMedDRAの改訂に伴って更新され、MedDRAに付随して提供される文書である。本文書は、ICH運営委員会の指示によって設けられたワーキンググループにより作成され、メンテナンスされている。ワーキンググループのメンバーは、EU、日本、USAの規制当局と製薬企業の代表に加え、カナダ規制当局およびMSSOとJMOの代表で構成されている(ワーキンググループメンバーリストは付録 6.2項を参照)。
本文書に記載されている原則は、ユーザーがデータ入力(コーディング)のための「MedDRA用語選択:考慮事項(MedDRA Term Selection: Points to Consider)」文書に記述された原則と併せて適用した場合に最も効果を発揮する。本文書は、製薬企業および規制当局のいずれの目的にも利用できるデータ検索と提示の選択肢を示している。MedDRA自体にも検索のための仕組みが備えられているが、本書はより広範なデータ検索を対象としている。
本文書で示している例示はMedDRA バージョン14.1に基づくもので、読者の理解を容易にすることを意図したものであり、規制当局が求める要件を示したものではない。
文章中に引用されている図表は付録の6.3項としてまとめた。
JMO注)英語版では全ての図表を末尾の付録としてまとめているが、内容の理解を促進するため、日本語版では日本語化した図表のみ本文中に差し込み、英語版オリジナルの全ての図表を末尾に掲載している。なお、英語版では図表を全てFigure xx として通し番号が付与されているが、日本語版では図と表を「図 xx」、または「表 xx」と区別し記載している(番号はオリジナルの英語版のものに合わせている)。
1.1 本文書の目的
本文書「MedDRAデータ検索と提示:考慮事項」の目的は、データ検索の選択肢がどのようにデータ出力の正確性と一貫性に影響するのかを実例を挙げて示すことである。例えば、一部の医薬品あるいは治療領域ではデータ出力に特別な方法が必要となるかもしれない。「MedDRA用語選択:考慮事項 」に記述されている、あるいは企業独自のコーディングガイドラインに記述されている用語選択オプションも考慮するべきである。
MedDRAを利用している組織は、本文書との整合性に留意して作成した組織独自のガイドライン中に、データ検索と出力の方針、方法、品質保証プロセスなどを記述することが推奨される。
1.2 MedDRAの用途
MedDRAは紙媒体または電子的な個別症例報告における副作用/有害事象(AR/AE)用語の報告に使用される。MedDRAの構造は、安全性データの解析が容易に実施できるよう、これらの報告用語を医学的に意味のあるグループに集約することを可能としている。MedDRAはまた、報告(表、ラインリスト等)中のAR/AEデータを一覧する、類似のAR/AEの頻度を計算する、あるいは製品の使用理由、臨床検査、病歴や社会的な経歴等のような関連するデータを把握し解析するのにも使用できる。
1.3 本文書の利用方法
本文書に記載されている原則は、MedDRAでコーディングされた全てのデータに適用されるものである。本書は集約されたデータを対象に絞り、その考慮事項を示す。本文書はMedDRAの個別症例報告、医薬品表示、医学的評価、統計的手法の利用に関する問題は取り扱わない。
MedDRA自体には利用に際しての特定のガイドラインは含まれていないため、本PTC文書は、全てのMedDRAユーザーの支援を目的とする。本書はデータの分析や提示の際に、臨床データの医学的に意味のある評価および分析のため、MedDRAの一貫性のある使用を推進する枠組みを示すものである。
本文書はMedDRAの特徴を説明し、MedDRAの構造、ルールおよび取り決め事項がデータ出力に与える影響について記述している。本文書に記載されている例示および選択肢は特定の規制報告要件や特定のデータベースに関連する問題点について明らかにすることを意図してはいない。本文書で全ての状況について記述できるものではないことから、常に医学的判断を適用すべきである。
本文書はMedDRAのトレーニングに代わるものではない。ユーザーがMedDRAの構造および内容についての知識を有していることが必須である。ユーザーはMedDRAを最大限に活用するために「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」、「MedDRA標準検索式(SMQ)手引書」(付録 6.1項を参照) および「MedDRA用語選択:考慮事項」を参照すべきである。これらの文書は何れのMedDRA利用契約においても利用可能である。
2.1 原データの質
報告された原情報の質が一貫性のある適切な用語選択によって確実に保持される場合に、質の良いデータ出力が得られる。各組織はデータの品質チェックを継続的に実施すべきである。データ品質の問題は「MedDRA用語選択:考慮事項」でも論じられている。
2.1.1 データ変換における留意点
他の用語集からMedDRAへデータ変換した方法について特に留意されたい。用いられた変換方法は検索と提示の方針に大きな影響を与えうる。
Ø 方法1 過去にコーディングされた用語からMedDRA用語にデータを変換する
結果は過去の用語集の特性が反映される。
より詳細なMedDRA用語の特性による利点は得られない。
例示
Ø 方法2 過去の原報告用語(vervatim terms)からMedDRA用語にデータを変換する
例示
データ変換した日付と併せてデータ変換方法も記録しておくこと。
2.1.2 データ変換方法の影響
上記に示した2つの変換方法を併用した場合、出力データの解釈に影響が及ぶ可能性がある。
例示
検索の方針を定める際に、方法1を用いて変換されたデータは報告語を確認することが有用であるかもしれない。検索式が特異的な(詳細な)MedDRA用語を基にして作成された場合、過去に特異性の低い(荒い)用語でコーディングされたデータは見落とされてしまう可能性がある。
例示
このレベルの詳細な検索を行う場合には、精査するか報告語からコーディングし直す必要があるかもしれない。過去のデータでは、AR/AE項目以外のデータフィールドにこの情報が格納されているかもしれない。
2.2 データ検索と提示プロセスの文書化
MedDRA用語選択ルール、検索と提示の方針(SMQおよび他の検索式の利用を含む)および品質確保の方法を文書で記録することが重要である。組織独自の基本方針はPTC文書と整合性をもつことが必要であり、また下記の事項を含むべきである。
検索に用いるMedDRAバージョン
検索の方針(再現するに十分な詳細なもの)
バージョンアップの手順
個別対応のMedDRA検索式の作成と維持管理の方法
2.3 MedDRAを変更しないこと
MedDRAは標準用語集であり、用語の階層構造はあらかじめ決められている。
ユーザーはプライマリーSOCの変更など便宜的な構造上の変更は行ってはならない。若しそのようなことが行われればMedDRAの標準用語集としての品質を危険にさらすこととなる。
用語が階層構造上で不適切に分類されていると考えた場合には、変更要請をMSSOに提出すべきである。
2.4 組織独自のデータの特徴
MedDRAは標準用語集であるが、異なる組織が様々な方法で使用している。組織独自のデータの特徴と導入の方針を理解することが重要である。
各組織は、MedDRAに関する専門的な助言を与えることができ、また下記のようなデータベースの特徴に関する知識を持っているMedDRAスペシャリスト(専門家)に相談できるようにしておくべきである。
データベースの構造(どのようにMedDRAの階層が保存され使用されるか)
データの格納状況(例えば、用語レベル、シノニム/報告語)
他の用語集からMedDRAへのデータ変換(該当する場合)
コーディング実務の推移
例示
制限/制約
例示
使用されている用語選択の方式
Ø 一つの医学的概念をコーディングする際に、二つ以上の用語を選択すると、カウントされる用語数が増加する。
Ø 診断名のみを選択している(徴候および症状は選択しない)とカウントされる用語数は少なくなる。
Ø 診断名と徴候および症状の用語の両方がコーディングされている場合の有害事象 プロフィールは診断名のみをコーディングしている場合と異なって見えるかもしれない。他のデータベース(例えば、共同開発や共同販売の提携会社、規制当局)から入手したデータを利用したり比較したりする場合は、常に各組織のコーディングの規約を念頭に置くこと。
2.5 データ検索と分析に影響を及ぼすMedDRAの特徴
MedDRAの構造、ルールおよび取り決め事項の詳細は「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」に記載されている。データ検索と提示の際は、次に示すMedDRAの特徴に留意されたい。
2.5.1 グループ用語(HLTおよびHLGT)
HLTとHLGTレベルは臨床的に関連のある概念をグループとしているので、データ分析と検索の補助ツールである。
例示
2.5.1.1 グループ用語に含まれる用語の確認
対象とするHLGT/HLTに含まれる用語を検討し、全ての用語が出力の目的に適していることを確認する。
例示
2.5.2 情報粒度(Granularity)
MedDRA用語における (基本語:PT) は、他の用語集でこれに相当する用語に比べると、より特異的(粒度が高い)である。表1は他の用語集では単一のPTでコーディングされていた用語がMedDRAでは複数のPTとなることを説明したものである。
表1.他の用語集では単一のPTで、MedDRAでは複数のPTで表現される事象
他の用語では単一の用語として表示される関連する事象が、MedDRAでは複数のPTで表示される可能性がある。この事がシグナル検出に影響する可能性があるので留意すべきである。
2.5.3 多軸性(Multi-axiality)
多軸性とは、PTが二つ以上のSOCに属している可能性があることを意味する。多軸性は用語が医学的には適切な異なる分類(例えば、病因別や器官別)でグループ化されることを可能にしている。各PTには一つのプライマリーSOCが定められており、他のSOCへの関連付けは全て「セカンダリー」と呼ばれる。プライマリーSOCは一つだけなので、全てのSOCを用いてデータを出力するときに事象の重複カウントが回避される。
MedDRAではPTのセカンダリーリンクとして可能性があるすべてのSOCにリンクが設定されている訳ではない。しかし、追加変更要請の結果として、新規あるいは異なるSOCへ関連付けられることがある。
2.5.3.1 プライマリーSOCへの関連付けのルール
プライマリーSOCの付与ルールは「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」に記載されている。このルールはMedDRAの中での用語配置に影響し、SOC別のデータ表示を決定する。これらのルールは特定の医学的状態に関連する用語が二つ以上のSOCにリンクすることを可能にしていることから、データを見落とすことがないように、ユーザーは全てのMedDRAのSOCについて全般的な構造と内容に精通しているべきである。
例示
例示
2.5.3.2 非多軸性のSOC
次の三つのSOCに属する用語は多軸のリンクを付与されていない。
SOC 「臨床検査」
SOC 「外科および内科処置」
SOC 「社会環境」
このことは多軸性に頼って対象とするMedDRAの全用語を探し出すことを不可能としているので、検索式や検索の方針を策定する際に重要である。
例示
上記のように、臨床検査の結果の用語はSOC 「臨床検査」にリンクしており、対応する医学的状況との多軸的なリンクがない。MedDRAでコーディングされたデータの表やデータリストを検討する際には、このことに留意されたい。
例示
表2は臨床検査の結果としてコーディングされるデータと関連する医学的状態の影響を更に説明している。
表2.類似した医学的状態が、臨床検査SOCと障害SOCに跨る複数のMedDRA用語で
コーディングされる例示
2.5.3.3 臨床的に関連あるPT
臨床的に関連性のあるPTが、一つのSOC中の異なるグループに配置されていたり2つ以上のSOCに分散して配置されているために、見落とされたり互いに関連があるのを認識されなかったりすることがある(2.5.3項参照)。
例示
上記の点を考慮しないと、該当する医学的概念の頻度が過小評価されることとなり、データの解釈が大きく影響される可能性がある(3.2項を参照)。
MedDRAのSOCは発現部位、病因学、特別な目的別に用語をグルーピングしている。データはユーザーが予期しないSOCに属している用語にコーディングされている可能性がある。関心のある医学的状態の頻度に対し、多軸構造が影響する可能性があることに留意されたい。
例示
2.6 MedDRAバージョン管理
MedDRAは年2回更新されている。バージョン”X.0”ではシンプルチェンジとコンプレックスチェンジの変更がされ、バージョン“X.1”ではシンプルチェンジの変更のみがされる。
データ出力に影響する可能性があるので、各組織はこのようなMedDRAの更新の種別を認識
しておくべきである。
シンプルチェンジおよびコンプレックスチェンジのいずれも検索と提示の方針に影響を与える。ユーザーは各MedDRA更新時に提供される文書、特に ”What’s New” 文書と ”MedDRA version report” を読んで知っておくべきである。MSSO/JMOから提供されるこれらの文書は、MedDRAの変更の詳細が記載されている。
JMO注) What’s New文書はJMOでは「最新情報(MedDRAバージョンxx.x)」として提供しており、MedDRA version reportに相当するものは「MedDRA/Jバージョンxx.x改訂情報-日本語表記の変更を中心として」として提供している。いずれもバージョン更新の一部であり、同時にJMOのWebsiteからも取得できる(ID/PWが必要)。
ユーザー組織ではMedDRAのバージョン更新に関する方針を検討し文書で記録すべきである。また、検索および提示を計画あるいは実行する際にはMedDRAのバージョンを文書で記録すべきである。
MedDRAの変更が既存データの頻度表示を含む検索結果に影響を与えることがあることに留意されたい。
例示
表3.バージョン14.0でPTであった「逆流性食道炎」が14.1ではLLTに降格されていること
による影響
例示
検索を構築する用語は検索されるデータと同一のMedDRAバージョンである必要がある。組織によっては、過去データは二つ以上のMedDRAバージョンでコーディングされていることがある。
新しい用語は、MedDRAバージョン14.1で作成された新しい検索式には含まれるかもしれない。各組織のバージョン管理方法にもよるが、これらの新しい用語は旧データには存在しないことになる。これでは不十分な検索結果になってしまうかもしれない。
検索式が過去のバージョンで組み立てられている場合(例えば、すでに終了した試験に以前使用された)は、新しいバージョンでコーディングされたデータを検出できないことがあるので、総合安全性概要(ISS:Integrated Summary of Safety)に必要な全てのデータを検出できないかもしれない。組織内システムに蓄積された全ての検索式は新しいデータに用いる前に適切なバージョンに更新する必要がある。
MedDRAのバージョン更新をどのように取扱うかについての助言は本文書の範囲外である(「MedDRA用語選択:考慮事項」の付録 4.1を参照)。データベースによっては異なるMedDRAバージョンでコーディングした多数の臨床試験データを保有していることがある。これはデータを集積する際(例えばISS作成時)に影響する。MSSOが提供している臨床試験と市販後データのバージョン管理オプションに関する推奨文書を確認さ
JMO注)MSSOの推奨文書は「MedDRA/J利用の手引き」に収載されている。また、JMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)からも入手できる。
3.1 一般原則
データ検索は、臨床試験データの要約や分析、ファーマコビジランス、医薬品情報に対する問い合わせおよびその他多くの目的で実施される。データを検索する際に適用される検索方針、方法およびツールは、出力結果をどう利用するという目的によって異なることがある。
データ検索の一般的な手順の概略は下記の図のとおりである。
データ検索する前提に、詳細な調査を必要とする既知あるいは潜在的な安全性の課題が存在するであろう。非臨床試験、臨床試験、市販後調査、類似製品(同効薬)や規制当局の質問などの情報が、焦点を当てる対象を特定することに有用と思われる。こうして得られた理解が検索用語の集積、適用する方法、あるいは最適なデータ表示方法を定める方針に影響する可能性がある。
個々のデータベースの特徴、組織独自のデータ入力ルール、データソースおよびデータベースのサイズ、全データのコーディング使用されたMedDRAのバージョンなどを認識する必要がある。過去に利用した検索を再利用できる可能性があり、特にファーマコビジランスにおいては、検索式が更新されていれば可能であろう。
有害事象を提示する際、その事象の真の発現率が不明確とならないよう、関連する事象をまとめて提示する(即ち、対象とする状態と同一とされる事象をグループ化する)ことが重要である。検索方針は文書で記録すべきである。検索の出力結果のみではデータの評価(例えば、ある状況の発現頻度)には不十分であるかもしれない。検索結果は最初に提起された問題点と対比して評価すべきである。
関連ある有害事象をカテゴリー化するのは困難な場合がある。検索のパラメーターが狭すぎれば関連の可能性がある事象を見落とすことがあり、パラメーターが広すぎると傾向やシグナルを特定することが困難になるかもしれない。症候群として考えられるか否かに係わらず、分析のために可能性のある事象や医学的状態に該当する用語をグループ化する際には、慎重な判断が必要である。目的は、個別症例の見直しを含む、追加の分析を必要とする可能性がある傾向を識別することである。複雑な質問式の場合は、対象とする医学的状態の定義を包含したデータ分析計画を作成することが推奨される。質問内容に相応しい最適なツールと方法を見つけ出すために、全ての関係者の間で協議を持つことが奨められる。
下表に示す検索種別については、上記の原則を適用すべきであろう:
事例
3.1.1 グラフによる表示
大規模データを扱う場合は特に、グラフでの表示が非常に有用である。グラフ表示は潜在する。
シグナルを素早く視覚に訴える。データを表示するのにグラフ表示を活用することが推奨される。ヒストグラム、棒グラフ、円グラフは、より複雑な統計的手法により作成された表示(例えば、データマイニングアルゴリズムからの出力)と同様に有用である。そのような種類の例示は、本書の数箇所に示されている。
3.1.2 患者の部分母集団
MSSOとJMOのWebsiteには小児と性別の有害事象用語リストが掲載されており(付録, 6.1項参照)、これらの部分母集団の検索の補助に使えるかも知れない。しかしながら、個々のデータベースの患者背景のデータフィールドを参照することは必須である。
JMO注)小児と性別の有害事象用語リストは、MedDRA MB会議の承認を経てMSSOがメンテナンスしているもので、バージョン11.0から提供されている。JMOでは日本語を付加したリストをJMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)に掲載している。
3.2 安全性プロフィール概要の提示
安全性プロフィール概要を提示する目的は次のとおり。
AR/AEの分布を明らかにする
より深い分析が必要な分野を特定する
関連する医学的状態に伴う可能性のある用語のパターンが即時に認識できるようにデータを提示すべきである。この趣旨を実現するためには、用語の全リストの提示からデータマイニング手法などの洗練された統計学的な手法法(付録 6.1項のICH E2E:薬剤安全性監視計画文書(Pharmacovigilance Planning Document)を参照)がある。
JMO注)日本では医薬品医療機器総合機構のWebsite
(http://www.pmda.go.jp/ich/ich_index.html)でICH関連情報を参照できる。
従来の標準的な方法は「器官分類(Body System)」や「器官別大分類 (System Organ Class)」と「基本語」でデータを提示することであり、これはMedDRAのSOCとPTに相当する。しかし、前述したMedDRAの特性(情報粒度、多軸構造など)により、このPT-SOCによる方法は、出力する目的によっては他のデータ出力方法(例えば、セカンダリーSOCによる出力、HLTやHLGTのグループ化用語を用いた表示など)も追加する必要があるかもしれない。例えば、類似の医学的状態が種々の報告語として記述されている場合、それらは下記のように区分されて表示される可能性がある。
多数の異なるPT(シグナルが希釈される)
異なるグループ用語
異なるSOC
ユーザーが直感的に予期しないSOC(例えば、SOC「一般・全身障害および投与部位の状態」、SOC「妊娠、産褥および周産期の状態」、SOC「傷害、中毒および処置合併症」、SOC「感染症および寄生虫症」)。次の例示を参照されたい。
例示
JMO注)Body System(器官分類)はCOSTARTで用いられていた分類、System Organ Class(器官別大分類)はWHOARTおよびJARTで用いられていた分類で、MedDRAも同じSystem Organ Class(器官別大分類)を用いているが、内容は同一ではない。
3.2.1 プライマリーSOCによる概観
この概観はデータ検索の第一段階として実施し、その後の更なる分析の計画に利用することを推奨する。
この手法は全ての事象を一覧し、SOCごとの集団として認識するのに有用であろう。また、階層構造を用いれば、HLTやHLGTごとの集団として確認される。小規模のデータセットでは、このプライマリーSOCによる表示が必要で十分なものであるかもしれない。
目的:
全事象を盛り込む(如何なる事象も除外しない)
全データをMedDRAの階層構造を用いて表示する
方法:
HLGT、HLTおよびPTのプライマリーSOCによるデータの提示は標準的な表(臨床試験および市販後データ)および累積サマリー(市販後データ)で使用することができる。ラインリスト(臨床試験および市販後データ)もプライマリーSOCとPTで提示することができる。出力の目的によっては、プライマリーSOCとPTのみを使った表示が有用である:大規模なデータセットについては、SOCとともにグループ化用語(HLGTとHLT)による表示が望ましいかもしれない。表4はそのような出力の例示である。
表4.プライマリーSOCを利用したアウトプットの例示
JMO注)上記例示には日本語カレンシーフラグがNの用語が含まれているので注意されたい。
言語や文字体系の違いに関係なくSOC順を同一とするために、SOCの国際合意順が決められた(表5.参照)。このSOCの提示順はAR/AE報告における各SOCの相対的な重要度に基づいている。国際合意順を用いれば、例えばSPCやPSURといった行政関連の機能に対応できるであろう(MedDRA手引書およびMedDRA ASCIIファイル参照)。データを交換する組織間ではデータの提示の際のSOCの順について合意しておく必要がある。
表5.MedDRAのSOC順-国際合意順と英語アルファベット順
グラフ表示(ヒストグラム、棒グラフ、円グラフなど)は結果を見る人の理解を助ける可能性がある。図6.と図7.はそのような提示の例示である。(図6と図7は付録 6.3参照)
図8a.と図8b.はある化合物の二つの患者集団における提示である。それぞれの集団において、SOCと報告者別に分けて表示されている。対となっている棒グラフの上部のバー(青色)は消費者からの、下部のバー(赤色)は医療専門家からの報告を示している。より詳細な情報が必要な場合は、発現頻度の降順にPTで有害事象を表示すればよい。(図8aと図8bは付録6.3参照)
綿密な分析には、グループ化すべき用語を特定するために医学的専門知識が要求される。
利点:
データ分布の全体像を示し、より深い分析が必要性を考慮する可能性のある特別な関心領域を特定する手助けをする。
グループ用語は関連するPTを集合させ、関心のある医学的状態を特定することを容易にする。
個々のPTは、重複カウントされないよう、一回だけ表示する。
プライマリーSOCによる概観は、小規模のデータセットには適切な唯一の分析方法かもしれない。
限界:
特定の医学的状態∕症候群に関連する用語が異なるSOCに分類されている場合があるので、PTのプライマリーSOC配置を基にしたこの方法では、ある医学的な状態等に関係する用語のグループ化が不完全となる可能性がある。
MedDRAの用語配置ルールのため、事象によってはユーザーが予想する配置に見つからない場合もある。
大規模なデータセットに適用した場合に、出力結果が冗長なものとなる可能性がある。
3.2.2 小規模データセットの概観提示
安全性プロフィールが小さなPTのリストで構成されている場合(例えば、臨床開発の初期のように)は、PT表示ですることで十分であるかもしれない。図9.はその事例である。(図9は付録6.3参照)
3.2.3 目的を絞った検索
関心のある医学概念をさらに調査する際、目的を絞った検索は有用である。例えば、規制当局からの問い合わせへの対応のために関心のある症例や事象の件数を確認するために目的を定めた検索を利用できる可能性がある。
プライマリーSOCによる出力で見られた内容について、さらに検討する場合
既に特定されている安全性の懸案事項(例えば、既知の薬剤クラス効果、毒性試験・動物試験の結果、など)
特別に関心のある事象のモニタリング
規制当局などのからの質問への対応として
以下に目的を定めた検索のアプローチのオプションを示す。これらのアプローチの適用順は、利用できるリソース、専門知識、システムなどの要因によるであろう。
3.2.3.1 セカンダリーSOC配置を用いた目的を絞った検索
この目的を定めた検索は、プライマリーSOCによる概観(3.2.1項参照)にセカンダリーSOCリンクを合わせることによって増補することができる。この方法の利用で、より包括的な“概観”が可能となり、MedDRAの多軸構造の利点(即ち、用語の医学的な相互関係)を最大限に利用できる。(付録6.3の表10を参照)
方法:
セカンダリーSOC配置を用いた目的を絞った検索の方法は、組織のデータベースの特性によって異なる可能性がある。
プライマリーとセカンダリーSOC配置の双方を表示に含むように、SOC、HLGT、HLTを検索する。
セカンダリーSOCにリンクするPTをプログラムにより出力する。
表11 プログラムによるプライマリーおよびセカンダリーSOCによる出力
SOC 「感染症および寄生虫症」
プライマリーSOCによる集計
セカンダリーSOCによる集計 (上記と同じデータでの集計)
もしデータベースが自動的にセカンダリーSOCの出力が出来ない場合は、可能な方法で検索を実施すべきである(例えば、プライマリーとセカンダリーSOCに配置されている全ての個別のPTのリストを出力するプログラムの作成)。
例示
利点:
多軸リンクはグループ用語の有用性を高める。この方法は3.2.1の項で述べたプライマリーSOCのみでの集約による制約を打開するものである。
限界:
一つのSOCもしくはHLGT/HLTに限定した表示のみであり、ある医学的状態に関連する全ての用語が包含されるとは限らない。
PTをプライマリーとセカンダリーのSOCで表示するこの方法では、用語を重複集計することとなる。
4.1 SMQとは
MedDRA標準検索式(SMQ)は安全性データの標準的な識別と検索を可能にする目的で開発された。
SMQは製薬企業と規制当局の代表で構成されているCIOMSのSMQ-WGとICH(MSSOとJMOを含む)の共同作業による成果物である。SMQは、目的とする医学的状態または関心領域に関係する一つ以上のSOCからのMedDRA用語のグループである。その用語グループには対象とする医学的状態あるいは関心領域に関連する徴候、症状、診断、症候群、身体所見、臨床検査および生理的検査データなどが含まれている。
MedDRAの利用者はあるSMQを利用する前に、そのSMQの内容を十分に理解し、アルゴリズムやウエイト付けのようなオプションを適切に利用するため、「MedDRA標準検索式(SMQ)手引書」を注意深く読むことが必要である。
4.2 SMQの利点
MedDRAを基本とした全ての検索式と同様、SMQの利用者はデータベースの特徴、データ変換方法、コーディングルール、あるいはMedDRAバージョンなどを含むいくつかの要素が検索に影響することを理解すべきである。詳細は3.1の項を参照。
SMQ利用の利点には下記のものがある:
複数の治療領域にまたがって利用することが出来る。
検索式は検証されていて、再利用が可能である。
安全性情報の標準化された情報交換に利用できる。
一貫性のあるデータ検索が可能である。
MSSO/JMOによってメンテナンスされている。
SMQは全ての医学的概念あるいは安全性の問題をカバーしていない。
SMQは開発段階でテストされているとはいえ、進化するものであり、使用経験で改良されていくものである。
4.4 SMQの修正と組織独自の検索式
SMQの内容や構造に如何なる修正を加えた場合は、もはや“SMQ”と称するのは適切でなく、“SMQに基づく修正されたMedDRA検索式”と称されるべきである。詳細については5.1項のSMQの修正の項を参照のこと。
組織の特別なニーズに対応して作成された検索式は如何なる場合でもSMQと呼称されるべきではない。これは他のMedDRAユーザーが使用するICHで推奨しているSMQとの混同を確実に回避するためである。組織が作成する検索式の名称は、ICHが推奨するSMQとの混同される恐れがない呼称であれば、何れであっても差し支えない。
4.5 SMQとMedDRAバージョン更新
それぞれのSMQは特定のMedDRAバージョンと関係している。SMQはMedDRAの各新バージョンの一部であり、MSSO/JMOによってメンテナンスされ、該当バージョンの用語に対応している。利用するSMQのバージョンは検索対象データのMedDRAバージョンと常に一致しているべきである。
MedDRAでコーディングされたデータを検索する場合は、常にMedDRAとSMQのバージョンを記録することが重要である。
MedDRAのバージョン更新時におけるSMQの変更には下記のものが含まれる(但し、これに限定されない)。
PTの追加
PTのインアクティブ化(不活化:即ち、SMQからの実質的な削除)
用語の範囲の変更(例えば、狭域から広域への変更)
SMQの再構成(例えば、SMQ内の階層位置の変更)
新規のSMQの開発
SMQに関する追加変更要請の詳細はMSSOの”Change Request Information”を参照されたい(付録の6.1項を参照)。各リリースバージョンの変更は新規バージョンの“What’s New”文書(最新情報)に記述されている。(変更情報の蓄積は該当ASCIIファイルの ”Term_addition_version” および ”Term_last_midified_version”というフィールドに格納されている)。
JMO注)SMQを含むMedDRAの追加変更要請の詳細は「MedDRA/J利用の手引き」を参照のこと。また、SMQのASCIIファイルの詳細は「MedDRA/J ASCIIおよび差分ファイル情報」を参照のこと。
SMQのMedDRAバージョンと検索対象のMedDRAバージョンが不一致であると予期せぬ結果を招くことがあり得るため、バージョンは同一であるべきである。例えば、過去のバージョンのSMQをより新しいバージョンでコーディングされたデータに適用した場合、過去のバージョンのSMQには含まれていない用語でコーディングされたデータは検索されない。
例示
4.6 過去データの変換がSMQ利用に与える影響
他の用語集(例えば、COSTART)でコーディングされたデータを変換する方法もSMQを利用した結果に影響を与える。2.1.2項のデータ検索に及ぼすデータ変換方法の影響を参照のこと。
4.7 SMQの追加変更要請
SMQの有用性を改善する必要性があると感じた場合は、MSSO/JMOへの追加要請変更を提出することが奨められる。追加変更要請に際しては必要な理由(可能であれば裏付けるデータ)を添付すべきである。SMQの追加変更要請のMSSOでの処理は通常のMedDRA用語の処理より長期間を必要とすることがある。
追加変更要請の前に、ユーザーはSMQ手引書において、該当SMQの包含・除外基準を確認すべきである。
4.8 SMQの利用ツール
MSSOのブラウザ(デスクトップブラウザーおよびオンラインブラウザーの何れも)ではSMQの内容の検索と参照が可能で、その中にはSMQ記述(定義)および開発ノートなどの詳細も含まれる。全ての公表されているSMQに含まれている用語を展開したスプレッドシートがMSSOあるいはJMOのWebsiteから入手できる(付録 6.1項を参照)。このスプレッドシートからユーザーは自由に用語を取り込み、検索ツールで転用することができる。SMQ関連のASCIIファイルの仕様は、各MedDRAバージョンで提供される「MedDRA ASCIIおよび差分ファイル情報」で確認できる。
JMO注)JMOが提供する検索ツール(MedDRA/J Browser V3.1.0およびオンラインブラウザー)でも同様のSMQの検索と参照は可能である。また、個々のSMQの内容を展開したスプレッドシートはJMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)から取得できる。
SMQ利用を技術的に支援するいくつかのシステムツールがMSSOのWebsiteに紹介されている。
JMO注)現時点では、日本国内で同様のリストの提供はない。
4.9 SMQの適用
SMQは、情報粒度が細かく独自の特性をもつMedDRAに対応して、関心ある特定の医学的状態を反映する全ての用語が確実に網羅されるよう開発されたツールである。
SMQの利用者は、最初に、問いかけられた質問に利用可能なSMQがあるかどうかをSMQのリストで確認すべきである。あるSMQが利用可能と考えられたら「SMQ手引書」の内容をチェックしてそのSMQの目的や定義を確認すべきである。同時にそのSMQに包含されている用語を確認することが望まれる。
選定したSMQをMedDRAでコーディングされたデータに適用した後に、検索結果(即ち、引き出されたデータ)を当初問いかけられた質問に照らし合わせて評価すべきである。検索結果のみではデータの評価は不十分であるかも知れない(例えば、発生頻度のみ)。SMQによって特定された症例の評価基準を決定して文書で記録することは良い方法と言える。
一般的には“ノイズ”が含まれるため、分析対象とするより多くの症例/事象が検索されるであろう。このことは“広域”検索の場合がより明らかであるが、“狭域”検索でも一般的に観察される(4.10.1項参照)。
4.9.1 臨床試験
SMQを安全性の概略がまだ十分に明確ではない時点での臨床試験、特に集積されたデータに用いることはできる。この場合、全てではないが多くのSMQを、可能であればルーチン的に用いることができる。
逆に、前もって特定されている関心の対象(例えば、非臨床試験データあるいは薬効群から)を確認するため、関連するSMQを用いることもできる。
例示
4.9.2.1 焦点を絞った検索
特定のSMQあるいはSMQの組合せを利用することによって、更なる医学的評価が必要とされる症例を検索することができる
例示
4.9.2.2 シグナル検出
SMQに包含される全てのPTのセットをシグナル検出に適用できるかもしれない。あるいは、シグナル値の希釈を少なくするために、狭域検索用語の使用、あるいはより特定した階層のSMQ(即ち、特定のサブSMQ)を適用することを考慮するべきかもしれない。
4.9.2.3 個別症例での警告
SMQは緊急評価を必要とする症例の発生を警告する”watch list”(例えば、自動化された通知システムの構築)として利用できるかもしれない。
例示
4.9.2.4 定期報告
SMQは定期的な安全性報告において特定の安全性問題を継続的に評価するために関連する症例を集約することに適用できる可能性がある。また、これ以外にSMQは定期報告において、その他のルーチンな集約データ(例えば、効果欠如の報告)の評価にも有用かもしれない。
4.10 SMQの検索オプション
SMQの中には、検索をより特異的にするオプションを有しているものがある。最も一般的なものは「狭域」および「広域」検索用語を使用するオプションである。広域検索は「広域」と「狭域」の両方の検索用語を含むと定義されている。
階層構造(即ち、一つ以上のサブ検索を持つこと)を有するSMQもある。その他にはアルゴリズムを持つものがあり、その1例(全身性エリテマトーデス(SMQ))では徴候、症状、臨床検査結果にウエイト付けをして症例特定を支援している。
4.10.1 狭域検索と広域検索
ほとんどのSMQは、「狭域」と「広域」 のPTのサブセットを持っている。「狭域」のPT用語は、関心の対象となった事象を特定するより高い蓋然性(高特異性)を有しており、一方「広域」用語は、これに加えて可能性がある事象を特定する(感度が高い)ことを意図したものである。広域用語によって検索された事象は、更なる評価によって、関心の対象ではないとされる可能性がある。ユーザーは提起されている課題にとって最も適切な検索方式(狭域あるいは広域)を選択することができる。
対象とする薬剤が開発の初期段階、あるいは市販直後である場合は、広域検索の適用が推奨されるかもしれない。
例示
4.10.2 階層構造
かなりの数のSMQは階層構造(特異性で分割された一つ以上のレベルのサブSMQ)を持っている。ユーザーは提起された課題に最も適切な検索あるいはサブSMQの組合せを選択することが可能である。
「SMQ手引書」には、階層構造を持つSMQの適切な利用をガイドする「説明の注釈」が記載されている。階層構造を持つ「造血障害による血球減少症(SMQ)」の例示を下記に図示する。
例示
4.10.3 アルゴリズムを持つSMQ
アルゴリズムは用語の組合せを提供するが、それらが同一症例で検索された場合は、単独で広域用語が検索された場合より高度に対象の症例が特定されたということになる(下記の表を参照)。アルゴリズムを持つSMQの広域用語はカテゴリーに分割されていて、器官特有の徴候や症状、臨床検査用語などにグループ化されている(広域用語はB、C、Dなどにカテゴリー化されている)。従って、アルゴリズムの利用は多量の“ノイズ”(即ち該当しない症例)を減少させる。
アルゴリズムを持つSMQをアルゴリズムなしに利用(即ち、単に狭域と広域検索として適用)した結果はアルゴリズムを利用した結果とは異なる。
例示
*表中には各カテゴリーの一部の用語をリストしている
SMQ「全身性エリトマトーデス」はアルゴリズムを持つSMQで、同時に用語に重み付けを与えており(例えば、PT 「胸水」は“3”)、ウエイトの合計が“6”を超えると該当症例であることを示唆するものである。
全てのソフトウエアがアルゴリズムSMQの機能をサポートしている訳ではない。
4.11 SMQとMedDRAのグループ用語
MedDRAのグループ用語(HLT、HLGT)を利用した検索結果は関連するSMQを利用した検索結果とは異なるかもしれない。
例示
MedDRAは上述のとおり種々の検索ツールを提供している。しかしながら、個別対応の検索が必要とされる状況はありえる。
5.1 SMQに基づく修正MedDRA検索式
SMQは少しでも修正すると標準ではなくなるので、やむを得ない理由のない限りSMQに包含されている用語や構造を変更してはならない(4.4項参照)。
いかなる修正であれ、SMQを修正した場合は“SMQに基づく修正MedDRA検索式”と呼ぶべきである。オリジナルのSMQからのいかなる修正点も記録しておくべきである。
SMQに基づく修正MedDRA検索式を継続的に利用するのであれば、バージョン更新とその検索式のメンテナンスは修正を実施した組織の責任である。
例示
5.2 個別対応(Customized)検索式
MedDRAでコーディングされたデータに個別対応検索式を作成する場合には多くの考慮すべき事項がある。
個別対応検索式作成責任者には下記の要件が必要である。
- 医学的知識を持っていること
- MedDRAの構造と特性(例えば、階層構造、多軸性)とMedDRAのグループ全般の内容(SOC、HLGT、HLT)の知識があること
- 検索対象データの特徴と構造を理解していること
検索の特異性を定義すべきである
最初は対象の事象に関連するSOCに焦点をあてるべきである。例えば、腎臓の状態に関する個別対応検索はSOC 「腎および尿路障害」から開始すべきである。
多軸構造をとっていないSOC(「臨床検査」、「外科および内科処置」、「社会環境」)は常に確認が必要である。加えて、特定の臓器を代表しないSOC(例えば、「一般・全身障害および投与部位の状態」、「傷害、中毒および処置合併症」、「妊娠、産褥および周産期の状態」)の中の関連用語を調べることは有用かもしれない。
・ 下記の方法で検索用語を特定することが有用である。
- MedDRAを“Bottom-up”方式で関連する用語を特定する(例えば、最初にLLTやPTレベルで関連用語を見つけ、上層展開する)
- MedDRAを“Top-down”方式で関連する用語で特定する(即ち、SOCレベルから始めて階層を介して下層展開する)
多軸の関連付けのある用語ではセカンダリーリンクから追加の関連検索用語を見つけることを考慮されたい、例えば、PT 「呼吸困難」はプライマリーリンクとして他の症状と共にSOC 「呼吸器、胸郭および縦隔障害」にあるが、同時に他の心臓関連の症状のPTと共にSOC「心臓障害」にも見られる。
可能な場合はグループ用語(HLT、HLGT)を取り込む(2.5.1項参照)。
通常、検索式はPTとグループ用語で記述される。非常に特殊な概念(例えば、菌種)が必要でなければ、検索式の組み立てにLLTを利用することは避ける。
将来の使用のために個別対応検索式を保存することを考慮すること、即ち、MedDRAのバージョン変更によるメンテナンスが必要となる。
他のMedDRAユーザーにも有用である可能性がある個別対応検索式は、新たなSMQの開発の可能性があるので、MSSOへの提出(追加変更要請として)が考えられる。
* JMOのサイトへのアクセスにはID/PWが必要です。
6.2 ICH Points to Consider Working Groupメンバー
6.2.1 現在のICH Points to Consider Working Groupメンバー
* Current co-Rapporteurs
** Acting Rapporteur for June 2010 meeting of Working Group
6.2.2 – 現在のICH Points to Consider Working Groupメンバー
† Former Rapporteur
Figure 1 – How data coded to a single PT from another terminology may be
expressed by several PTs in MedDRA
Figure 2 – Multiple MedDRA terms may be used to code similar medical conditions
included in a “disorder SOC”; associated laboratory findings are in SOC Investigations
Figure 3 – In MedDRA Version 14.0, Reflux oesophagitis was a PT and in
Version 14.1 it was demoted to an LLT
Figure 4 – Primary SOC output listing - example
Figure 5 – The alphabetical SOC order (in English) and the Internationally Agreed
Order of SOCs
Figure 6 – Example of a graphical display (frequency by primary SOC)
Figure 7 – Example of a graphical display (frequency by primary and secondary SOC)
Figure 8a – The upper bar of each pair represents numbers of reports from Consumers (blue)
and the lower bar reports from Health Care Professionals (red) (Population 1)
Figure 8b – The upper bar of each pair represents numbers of reports from Consumers (blue)
and the lower bar reports from Health Care Professionals (red) (Population 2)
Figure 9 – For a small dataset, a display of PTs may be adequate
Incidence of treatment-emergent adverse events coded by MedDRA 14.1 Population: Patients Valid for Safety
Note: Sorted first by System Organ Class (alphab. order), then by High Level Term (alphab. order), then by Preferred Term (alphab. order).
Note: The table presents MedDRA terms of all paths.
Note: [1] means primary path, [2] means secondary path.
Figure 10 – Primary and secondary SOC output
SOC Infections and infestations
Primary SOC Analysis
Secondary SOC Analysis (same data as above)
Figure 11 – Programmed primary and secondary SOC outputs